熱海七つ橋の唄

１．いずみはし　えんめいざくらの　さくころは　あたみをどりの　のぼりばたまう

泉橋 延命桜の　咲く頃は 熱海をどりの　幟り旗舞う

２．おなりはし　いえやすめでし　あたみのゆ　おなりおなりと　ゆおけのとおる

御成橋　家康愛でし　熱海の湯　お成りお成りと　湯桶の通る

３．いとがわの　しんやなぎはし　かいわいの しゃみのねひびく　よるのいろとか
　
糸川の　新柳橋　界隈の　三味の音響く　夜の色と香

　　４．はつかわの　ながれははしる　うめのその　あしゆのどけき　あたみのゆ

初川の　流れは急流　梅の園　足湯のどけき　熱海の湯

５．さくらはし　むつききさらぎ　はなひらく　あたみざくらの　しとやかにさく
　　
　桜橋　睦月如月　花開く　桜 熱海 の　しとやかに咲く

６．ちゃかわはし　あたみざくらの　はなもよう　ひるにちるはな　よるにさくはな
　
茶川橋　熱海桜の 花模様　昼に散る花　夜に咲く華

７．やなぎはし　こがしまつりの　にぎわいの　ふえのねこのね　かけあいたのし
　
柳橋　焦がし祭りの　賑わいの　笛の音鼓の音　掛け合い楽し

　８．はつかわの　ながれゆたかに　あゆおどる　ゆかたすがたの　はなのまい

初川の　流れ豊かに　鮎踊る　浴衣姿の　華の舞

９．なぎさばし　しおかぜわたる　かわもには　まちのひのあか　さぎのはのしろ

渚橋　潮風渡る　川面には　街の灯の紅　鷺の羽の白




【解説】
　熱海の街の中を流れる川は初川（はつかわ）と糸川（いとがわ）がございます。
糸川には七つの橋が架かっていて、上流から泉橋、御成橋、新柳橋、桜橋、茶川橋、柳橋、渚橋でございます。それぞれ趣の異なる橋桁が熱海の風情を醸し出しております。

１．泉橋＝熱海の東銀座町通りから右に曲がりますと、小沢の湯を左に、大湯を右に見て少し行くと泉橋が糸川に架かっております。橋の袂には古くからの和菓子屋「延命堂」があり小さな祠を祀っています。下流を見下ろしますと、そこには土手の石垣の間から１本の桜の木が生えているのです。花は桃色でわたしはこの美しい桜を「延命桜 」と呼び愛でております。

２．御成橋 ＝江戸の昔、徳川家康は今から四百年前の慶長九年三月三日に熱海の温泉に入りに来ました。お湯がとても気に入った家康はそれからは熱海の温泉の湯を汲み江戸まで運ばせたということで、御成橋の欄干には家康の歌碑が刻まれております。今も熱海温泉の守り神、湯前神社の例大祭には熱海市長たちがその頃の衣装を着てこの朱色の「湯桶」を運ぶ[湯汲み]行事が続けられております。

３．新柳橋 ＝柳のレリーフがあるこの橋は御成橋のすぐ下流にあります。界隈には落ち着いた風情のある店が軒を連ねております。「村越魚店」は熱海ならではの新鮮な近海もののお魚が店先に並べられていて、夕方になりますと煮物や揚げ物のにおいがしてまいります。老舗旅館の女将たちも常連のお客さまです。

４．熱海梅園 の中のこの辺りでの初川は急流となっております。先頃ここに足湯が出来たのでございます。熱海温泉の足湯でのんびり、梅園の景色をみながらつかるのは養生にはほんとうにようございますこと。

５．桜橋 ＝熱海銀座からの浜町観光通りが糸川と出会う場所、その名のとおり「桜橋」の欄干には桜のレリーフが刻まれており、すぐそばに坪内逍遙の歌碑がございます。食事処や大人の遊び所も近く、観光客にも人気の場所となっております。橋の袂には極上の天麩羅のお店「鶴吉」も開店し情緒を醸し出しております。

６．茶川橋 ＝国道１３５号線が糸川を渡る場所でございます。橋の上は「銀座」のバス停となっております。ここには遺伝学研究所にも品種登録されている早咲きの桜として１月に満開になる熱海桜を始め、いろいろな種類の桜が長い間楽しめるところでございます。

７．柳橋 ＝欄干が波をモチーフにした大胆なデザインの美しい橋でございます。「焦がし祭り」は熱海の来宮神社のお祭りで厄年の天狗が無病息災を願って「麦焦がしを蒔く」という奇妙なもので小さな子供たちは恐ろしくて泣き出してしまいます。「熱海っ子」は子供の頃から町内会の山車に乗り、お囃子の太鼓をたたいて育ちます。山車コンクールは熱海の名物で７月の中旬のお祭りは普段静かな熱海の街がもっとも活気づく季節となっております。

８．小さな初川 も解禁には釣り人が上ってくる鮎を次々と釣り上げております。その初川の「納涼祭」は清水橋から初川橋にかけて８月の初旬に開かれます。熱海では熱海芸妓たちが浴衣姿でうちわ片手の行列で盆踊りをいたします。艶やかな芸者さんの「華の舞」、これまた浴衣姿も熱海ならではの風景でございます。

９．渚橋 ＝糸川が熱海の海に注ぐ所にございます。この辺りに海鳥の姿もよく見えております。川には階段で降りることが出来ますので夕涼みには風情がございます。
-Fujisan-